羽根の話

 私たちは、自分のこしらえた物に、小さな羽根をくくりつけて、空に飛ばす。誰かに届くように。
 ものをこしらえる人たちにとって大切なのは、何を作るかということ、それから、誰かに届くこと。
 ちっぽけな羽根のことなんて、考えていない人のほうが多い。だから羽根は、ときには汚れていたり、歪んでいたりするかもしれなけれど、なぁに、飛びさえすればいいのです。誰かに届くように。
 
 羽根を作る人たちもいる、それも私は知っている。彼らは、他の誰かがこしらえた物を楽に早く飛ばすことができるように、羽毛を選び、翼を組み立てる。素人に助力を差し出す玄人もいる、自分が苦労してきた素人もいる。自分がものつくる人もいる、誰かのこしらえたものを見たり読んだりするのが好きだからという人もいる。そんな援けの手を差し出す人は、多くはないけれど、いないわけでもない。
 
 それから私は、羽根ばかり見る人のことも知っている。
 
  「作品を人に届ける以上、それくらい勉強してください」
と、平気で言える人たち。けれどその「勉強」には、何かを作る時間を削らなければならない。他人の時間を奪うことに、痛みを感じない人たち。
 私はある場所で、そういう人にずいぶん出会った。あの人たちは不思議だったな。自分の棲家は明かさずに、誰かに文句をつけるときだけ、出てくる。
 もっと不思議なのは、彼らは、プロがヘンなことをしていても、あまり責めないこと。私が見るのは、物慣れない素人に文句をつけているところばかり。もしかしたらね、私の知らないところで言っているのかもしれないけれど、そんなことまでは知らない。だって、見せてはいただけないのだし。
 おかげで。わたしは、羽根をキレイにすることが、すっかり嫌いになりました。あの人たちの同類になるくらいなら、羽根なんて歪んだままのほうがどれだけマシか。
 
 私は、ひとが使う羽根までこしらえることはできないから。かわりに、羽根を探している人に、「あそこにあるよ」と知らせるかかりになりたいのです。
 渡した細い糸を手繰り寄せれば、その向こう側に羽根があるように。  
 

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by Adankadan